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「ザリガニの交尾は後が大事なんだよ。うっかりするとオスは殺られるんだ」。

幼稚園に通う頃になると、たいていの子どもは集団の中でいろいろな生き物の情報を仕入れ、その中の好きな小動物に夢中になるものです。我が家の長男の場合はザリガニでした。小学校2年の頃でしょうか、ベランダに所狭しと並べられた水槽で、捕まえてきたザリガニをたくさん育て、交尾をさせ、卵を産ませているのを自慢にしていました。

ある日の夕方、ふと見ると、2歳年下の妹を相手に何やらヒソヒソ話をしては、顔を見合わせてニヤッと笑っています。ちょっと気になって「何がおもしろいの?」と尋ねてみると、2人は声を潜めるように「ザリガニの結婚!」と得意げに教えてくれました。私自身、ザリガニの交尾など見たこともなかったので思わず水槽を覗きこむと、オスとメスが向かい合って、お互いにハサミを相手のほうに振り上げ、威嚇し合っているように見えます。子どもたちと3人、目を凝らして見ていると、オスがメスを狙いながら頃合いを見計らってパッと飛び掛かり、メスのハサミを押さえ付けるように仰向けに押し倒し、交尾をしました。子どもたちは思わず「ヤッタ!」と声をあげます。

「この後が大事なんだよ。オスはうっかりするとメスに殺られるんだ」。ザリガニは腹がいちばん弱くて、離れるときにブスッとおなかを刺されるかもしれないので、交尾は命懸けなんだと言うのです。息を飲んで見守っていたら、ザリガニ特有の尻尾の動きでサッと飛び離れたので、みんなで喝采しました。今も記憶に残る、感動的な光景でした。

小学校も高学年になると、好きな動物たちについては物知り博士のようになりますが、多くの場合は、やがて飼うことを卒業していくでしょう。子どもはこの経過の中で、交尾(生殖)、産卵(出産)、孵化、メスとオス(性徴)、成長(養育)など、性と生命に関するさまざまなことを体験的に学んでいきます。

ここで注意したいのは、大人が邪魔しないということです。親はついつい、子どもの興味を先取りしてしまいがちなんですね。スーパーなどでは虫捕りセットや飼育セットがこれでもかと言うほど店頭に並べてありますが、子どもたちが本当に欲しがるまで、そして、自分で世話をするという約束をするまで、買わないことが肝心です。子どもは、誰が教えなくても、驚くほどの発見をします。夢中になればなるほど、分からないことを自分で調べたり工夫したりもします。親は、それを子どもに教えてもらうような気持ちで、対等に付き合っていくのがいいと思います。きっと「うちの子は天才なんじゃないか?!」と思うような感動を、何度も味わわせてもらえることでしょう。

このように、九つまでに性と生命の基本を学ぶことは、思春期以降の性的関心や性教育に大きく影響します。8~9歳の頃、性の体内時計のアラームが鳴って性ホルモンの発動が起こると、子どもたちは恥ずかしがって、性への関心に口を閉ざしてしまうからです。思春期の性教育は、「人を愛するとはどういうことか」を教える『こころの教育』です。それがきちんと子どもの心に届くためにも、つの付くうちに『いのちの教育』を心にしっかり染み込ませてやることが、しつけの中でも特に大切な務めだろうと思います。
山縣院長著『だいじょうぶ!子どもは育つ』より

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