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あかちゃんの心に安心と信頼を、お母さんには何物にも代えがたい愛情を 

ヒトは、他の動物に比べ、一年以上未熟状態で生まれてくると言われます。生まれてきたあかちゃんはやや毛深いものの、体温を保ってくれるほど毛に覆われているわけではありません。身を守るための行動と言えば、転がることすらできません。栄養を取るために備えられている消化液は、生後約一年間は、ラクターゼなどの乳汁分解酵素しかありません。あかちゃん言葉は泣き声や「あーうー」といった発声(喃語)ですが、大人はそれを理解できません。

あかちゃんの安全と安心は、抱かれることで得られます。温かい腕の中に抱かれると、寒い冬のコタツのように、うっとりするくらい気持ちがよくなります。ただ温まるのではなく、血と気の通った温もりです。まるで至福の世界だった胎内にいるかのように感じるでしょう。生き物の本能として、お母さんはあかちゃんにおっぱいをふくませます。母乳は、よく知られているように、あかちゃんを養い、育て、微生物と共存できる、さまざまな成分で満たされています。

そして、おっぱいを吸われると、お母さんの体内にはプロラクチン(乳汁生産ホルモン)やオキシトシン(射乳ホルモン)が大量に分泌されます。プロラクチンは母乳を作る働きだけではなく、お母さんの「育てたい」と思う母性スイッチを入れると共に、辛さを和らげる麻酔作用を発揮します。子宮収縮を促してくれるオキシトシンは、愛情ホルモン・優しさホルモンとも言われ、ストレスの緩和や癒しの働きもあるとされています。どちらも、母体の情動に働き掛けて『愛ずる(めずる)』と表現される深い愛おしみを汲み出すつるべのような役割を果たします。

抱いておっぱいをふくませるという自然の営みが続いていくうちに、お母さんはいつの間にかあかちゃんを理解するようになり、あかちゃんにはお母さんへの絶対的で永続的な信頼感(『母いのち』という想いの刻み込み)が出来上がります。この信頼感(人を信じる力)が人間性の基本になります。

このように母乳育児は、母乳という乳汁を飲ませることだけに意味があるわけではなく、『人間になる』という遺伝子のスイッチをオンにし続ける、2万年続いてきた自然の仕組みなのです。
(山縣威日著『だいじょうぶ!子どもは育つ』より)

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